単純な生活

映画・音楽・読書について、だらだらと書いている

本の本 #3 / 読書エッセイ Part 1

 

本、あるいは読書に関するエッセイ集を紹介する。

Part 1ってことは、とうぜんPart 2もあるわけである。いつアップするかは未定だが。

 

 

01. 『人の読まない本を読む / 山下武』(本の友社)

人の読まない本を読む―赤耀館読書漫録

人の読まない本を読む―赤耀館読書漫録

 

 書評専門紙「週刊読書人」に連載されていたコラムをまとめたもの。

 「人の読まない本を読む」というタイトルが良い。このままブログのタイトルに使えそうだ。まんまパクるのはまずいだろうから少し変えて、「人の読まない本はボクも読まない」とか。

 それにしても、知らない名前がたくさん出てきて、読んでいるうちに頭がくらくらしてくる。土田杏村とか中山呑海とか、どこの誰だよ。

 

 こういうコラムを書く人は、たいてい古書好きで(と言うか、読みたい本が古本でしか売ってなかったりするわけで)、古書店から送られてくる即売会の目録をよく読んでいるし、古書店巡りも日常生活のルーティンワークのひとつになっている。じつを言うと、わたしは20歳の頃から約20年間、都内の某古書店で働いていたので、この手の人には、ふつうの人よりは少し詳しい。はっきり書くけど、ちょっと気持ち悪いです(笑)。

 

 で、そんな本オタクが書いた本が面白いかと言うと、これがめちゃくちゃ面白い。ところどころに辛気臭い文章が現れるが(例 : 「それにつけても、いかにも貧相なのがこの国のエンターテインメントだ。『レ・ミゼラブル』や『永遠の都』と比較できるような作品がただの一つでもあるだろうか?)、そういうときは、うっせーよジジイ、と心のなかで突っ込みをいれて読み進めればよろしいのだ。

 

 

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短編小説パラダイス #10 / 岡田睦の『火』

 

タイトル :火

著者 : 岡田睦

収録短篇集 : 『明日なき身』

出版社 : 講談社 / 文芸文庫 (2017

明日なき身 (講談社文芸文庫)

明日なき身 (講談社文芸文庫)

 

 文庫カバーの袖に書かれている著者略歴は以下の通り。

岡田睦(おかだぼく)、1932年東京生まれ。慶応義塾大学文学部仏文科卒。1960年に「夏休みの配当」で芥川賞候補。3度目の妻と離婚後、生活に困窮し、生活保護を受けながら居所を転々とし、『群像』2010年3月号に「灯」を発表後、消息不明。

 

 消息不明というのが凄い。

 

 では、あらすじを。

 

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本の本 #2 / ブログに役立つ文章読本

ブログ作成に役立つ(であろう)「文章読本」を6冊紹介。

最後の1冊は、かなり曲者だが…。

 

 

01. 『日本語の作文技術 / 本田勝一』(朝日新聞出版)

【新版】日本語の作文技術 (朝日文庫)

【新版】日本語の作文技術 (朝日文庫)

 

 文章を書くうえでの基本のキは、この本ですべて学べる。

「修飾語の順序」「句読点のうちかた」「助詞の使い方」、この3つの章を読んで実践するだけでも文章力は格段にアップするはず。

初版が出たのが1980年代初頭だが、内容はまったく古びていない。

 

 

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短編小説パラダイス #9 / マルセル・シュウォッブの『少年十字軍』

タイトル :少年十字軍

著者 : マルセル・シュウォッブ

収録短篇集 : 『少年十字軍』

訳者 : 多田智満子

出版社 : 王国社

少年十字軍 (海外ライブラリー)

少年十字軍 (海外ライブラリー)

 

マルセル・シュウォッブは、1905年に37歳の若さで世を去ったフランスの小説家。

「少年十字軍」は、かれの天才が存分に発揮された傑作。

 

★★★

 

西暦1212年、北フランスのロワール河流域ヴァンドーム地方と、ドイツのケルンに、まったく別々にではあるが、ほぼ時を同じくして、のちに“少年十字軍(Children's Crusade)”と呼ばれることになる集団が現れた。

フランスではエティエンヌという羊飼いの少年が神の啓示を得、リーダーとなって聖地エルサレムの奪還をめざし行進を開始した。これに賛同した各地の少年たちがエティエンヌのもとに集まり、その総数は3万人ちかくにのぼったと言われる。

“聖地奪還”といっても、かれらは何の武器も持たず丸腰であり、なにより平均年齢が13歳前後の少年たちである。ボロをまとっただけの少年たちが、ぞろぞろとエルサレムをめざしたのである。

親たちは、子供たちのこの異様な行動を必死になって止めようととしたが、止めることができず、事態を憂慮した国王も少年たちに帰宅を命じたが聞き入れるものは少なかった。

 

やがて彼らはマルセイユに到着する。

ここから七艘の船に分乗して聖地をめざした。

が、この輸送を請け負った回船業者は、少年たちの聖なる行動に感動して船を用意したわけではなかった…。

回漕業者の親玉は、少年たちをアレクサンドリアに連れ去り、そこで奴隷としてイスラム圏に売りとばしてしまったのである。

  

シュウォッブの短篇は、この中世の異様な史実を、当事者の少年たちをはじめ、乞食の僧侶、ローマ法王、癩者、回船業者の秘書、回教僧など、さまざまな立場の視点から語っていく。

歴史小説といった感じはなく、ぜんたいに美しい詩情が漂う。

 

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短編小説パラダイス #8 / エルモア・レナードの『三時十分発ユマ行き』

タイトル : 三時十分発ユマ行き

著者 : エルモア・レナード

収録短編集 : 『オンブレ』

訳者 : 村上春樹

出版社 : 新潮社 / 文庫

オンブレ (新潮文庫)

オンブレ (新潮文庫)

 

 エルモア・レナードアメリカのミステリー作家。1984年に『ラブラバ』でエドガー賞(最優秀長篇賞)を受賞した他、多くのヒット作がある。日本での人気は本国に比べるといまいちだったが、根強いファンがいる。

 「三時十分発ユマ行き」は、これまでに2度映画化された西部劇の名作。

 

 では、あらすじを。

 (と言っても、あまりにシンプルなので、設定を説明しただけで終わってしまうのだが)

 

★★★

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本の本 #1 / 書評の教科書 12冊

 

 面白い書評を書くための教科書は、けっきょく優れた書評そのものなのだ。

 と言うわけで、読み応えのある書評集を12冊。

 

 

 

01. 『ニッポンの書評 / 豊崎由美』(光文社 / 新書)

ニッポンの書評 (光文社新書)

ニッポンの書評 (光文社新書)

 

  豊崎由美はプロの書評家である。作家でもなく、詩人でもなく、エッセイストでもなく、編集者でもなく、評論家でもなく、日本では数少ない“書評の専門家”である。

 この本は、豊崎由美が、自らの書評の書き方を惜しげもなく披露した1冊。

 書評家の役目から始まり、粗筋の書き方、書評の文字数、ネタばらしはどこまで許されるか、プロの書評と感想文の違いなど、書評に関するあらゆることを俎上にあげて詳しく解説していく。

 Amazonのカスタマーレビューに対する過剰とも思えるダメ出しもあり、ダメ出しをしたレビューを著者が書き直すという怖いこともやっている。

 巻末に著者と大澤聡の対談あり。

 

 

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短編小説パラダイス #7 / アンブローズ・ビアスの『アウルクリーク橋の出来事』

 

タイトル : アウルクリーク橋の出来事

著者 : アンブローズ・ビアス

収録短編集 : 『アウルクリーク橋の出来事 / 豹の眼』

訳者 : 小川高義

出版社 : 光文社 / 新訳古典文庫

アウルクリーク橋の出来事/豹の眼 (光文社古典新訳文庫)
 

 アンブローズ・ビアスは、アメリカ文学を代表する短編作家のひとり。1842年に生まれ、1913アメリカ南部の古戦場を巡る旅に出て、内線下のメキシコに入ったあと消息不明となった。

 作品のほとんどに南北戦争時の従軍体験が暗い影を落としている。

 「アウルクリーク橋の出来事」は、ビアスの代表作であるだけでなく、アメリカ文学史の中でも常に上位にランクされる名作である。

 では、あらすじを。

 

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