▶『ジブシーのとき』を観る。
1989年制作のユーゴスラビア映画。
監督のエミール・クストリッツァは、この作品によりカンヌ映画祭で監督賞を受賞。
先日観た『チャンシルさんには福が多いね』のなかで、主人公のチャンシルさんが映画の道にすすむきっかけになった作品として紹介されていた。
約30年ぶりに観た。
岩波ホールで初めて観たときと同じで、作品が持つ圧倒的なパワーに2時間やられっぱなしだ。
“ザ・映画”って感じ。
チャンシルさんが映画の道にすすみたくなったのも、わかる気がする。
ジプシーの村で家族(不思議な治癒能力を持つ祖母、病弱な妹、ろくでなしの伯父)と共に暮らす純朴な青年ベルハン。
ある日、犯罪で財を成した男アメードが村に戻って来る。
アメードの息子の病気を治した祖母は、孫娘をイタリアの病院に連れて行ってくれとアメードに頼む。
ベルハンは、妹の付き添いとしてイタリアへ行くことになるのだが、妹を医者にみせるかわりにアメードの手下として働くことを余儀なくされる…。
すこしずつ悪の道に染まっていくベルハン…。
すべてが気持ちよく過剰である。
チャンシルさんが大好きな小津安二郎の作品が引き算の映画とするなら、こちらは足し算の映画だ。
監督の好きなものを(人間、動物、物)すべて詰め込んだ感じ。
そして、どれもが常に動いている。
ごちゃごちゃと賑やかに動いていて、かたときも止まってはいない。
ラストは、悲劇なのだが、すこしも悲しくない。
切なくはあるが、悲しくはない(涙は流れない)。
この映画のなかでは、すべてのものが等価で、生と死すらも等価なのだ。
ただただ圧倒されて、2時間が終わる。
どっと疲れた。
▶ ジャンゴ・ラインハルト(Django Reinhardt) のベスト盤を聴く。
ジプシー(ロマ)・ミュージックってこれしか思い浮かばない。
洗練さすぎてて、本来のジプシー(ロマ)・ミュージックとは、もはや別物なのかもしれない。
ヴァイオリンのステファン・グラッペリの存在は大きいな。
そして、ふたりともダンディやわぁ。