単純な生活 / 気がつけば本を読んでいる

読書日記、ときどきブックガイド、的な。

読みながら、少し怖くなる

 

 『宿六・色川武大 / 色川孝子』(文藝春秋)を読んでいる。20年連れ添った夫人が夫・色川武大との生活を綴ったエッセイ集である。色川武大の異能ぶりが随所に見られて、読みながら少し怖くなる。

 たとえば、こんな場面…

 

ある日、夜十時ごろの電話だったでしょうか。

「オレだけど」

「どうしたの」

「具合が悪いんだよ。迎えに来てくれないか」

「今、どこにいるの」

「池袋の飲み屋だよ」

「矢来町の実家へ行かなかったの」

「行かなかったんだよ」

「すぐ、迎えに行くわ。電話番号とだいたいの場所を教えて」

 色川との会話中に、玄関の鍵をこじあける音。とにかく電話を切り、階下へ足を運んで、

「どなた」

「オレだよ」

 鍵を持っているのは、私と彼しかいないのです。

「だって、今、電話してきたじゃない」

「電話なんかしないよ」

「え、じゃあ今まで実家へ行っていたの」

「そうだよ」

 狐につままれたかのような出来事でした。色川といっしょだと、不思議なことに遭遇しても、そのつど驚いてはいられないのですが、この電話の主については、いまだに「?」なのです。  『宿六・色川武大』~p.68

  

じんわりと怖い。

 

 

 

 『小さな町で/ シャルル・ルイ・フィリップ』を読み始める。

小さな町で 大人の本棚

小さな町で 大人の本棚

 

  フィリップは、フランスの小説家。1874年、セリイという小さな町に生まれ、35歳の若さで亡くなっている。死の1年前に、パリの新聞「ル・マタン」に週1回ちいさな話し(コント)を連載し始め、それが死後2冊の本にまとめられた。

 フィリップは、新聞にコントを連載するにあたってモーパッサンの短編を参考にしたらしいが、モーパッサンよりはずいぶん洗練されている。

 日本での人気は格別と解説に書かれているが、いまはどうだろう。たしかにわたしの若いころは、たいていの本屋にフィリップの文庫が置いてあったが、いまはネット以外で手に入れるには相当大きい書店にいかないと無理だろう。時代は変わる。

 

 いま読んでいる本は、次の5冊。

 1. 『宿六・色川武大 / 色川孝子』

 2. 『小さな町で/ シャルル・ルイ・フィリップ

 3. 『暗い越流 / 若竹七海

 4. 『三つの物語 / フローベール

 5. 『夏の涯ての島 / イアン・R・マクラウド

 

 イアン・R・マクラウドの短編集は、少しずつ読んでいるので、なかなか終わりそうにない。