単純な生活

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ヘミングウェイの『殺し屋』を読み、キム・リッチーの新作に癒される

 

ヘミングウェイの『殺し屋』を読む。

 

ヘミングウェイ短篇集 (ちくま文庫)

ヘミングウェイ短篇集 (ちくま文庫)

 

 

最初に読んだのは、中学のときで、江戸川乱歩編の『世界短編傑作集』に収録されていた。

 

世界推理短編傑作集3【新版】 (創元推理文庫)

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  • 発売日: 2018/12/20
  • メディア: 文庫
 

 

この傑作を、中坊のワタシは生意気にも「たいして面白くないな」と思ったのである。

ラストがよくわからなかったのである。

 

 ヘンリーの店のドアが開き、ふたりの男が入ってきた。ふたりはカウンターにすわった。

「何にします?」 ジョージが尋ねた。

「さあな」 ひとりが言った。「おまえは何が食いたいんだ、アル?」

「さあな」 アルと呼ばれた男が答えた。「何が食いたいかわからねえ」

 

入ってきたふたりは、殺し屋である。アルとマックス。

店には従業員が3人。ニック・アダムス、ジョージ、コックのサム。

ふたりは、始終むだ口をたたきあいながら、コックのサムとウェイターのニック・アダムスを縛り上げて調理場に隠す。

残されたジョージには、客が来たら何か理由をつけて追い返せと命じる。

 

「おれたちはあるスウェーデン人を殺すんだ。オール・アンダーソンっていうスウェーデン人を知ってるな?」

「ああ」

「そいつは毎晩ここに食事をしにやってくる。そうじゃないか?」

「時々くる」

「おれたちは何もかも知ってるんだ、兄さん」マックスが言った。

 

かれらは、アンダーソンが来るのを、じっと待つ。

 

「あんたたちは何のためにオール・アンダーソンを殺すんだ? あの人があんたらに何かしたのか?」

「いや、やつがおれたちに何かするような機会なんてなかったよ。おれたちを見たことさえないだろう」

「たった一回だけ見ることになるな」 アルが調理場から言った。

「じゃ、何のためにあんたたちはオール・アンダーソンを殺すんだ」ジョージが尋ねた。

「おれたちは友達のために殺すんだよ。ただ頼みをきいてやるだけだ、兄さん」

 

 

しかし、アンダーソンは現れない。

殺し屋ふたりは、店を出て行く。

ニック・アダムスは、殺し屋のことを知らせるために、アンダーソンのもとへ走るのだが…。

 

と、ここまでは中坊のワタシにも理解できた。

わからなかったのは、ニックから知らせを受けたアンダーソンがとった行動なのである。

ネタバレになるので書かないが、ええっ? アンダーソンさん、なんで? と思ったのである。

年齢を重ねたいまならわかる。

痛いほどわかる。

 

ヘミングウェイが、この怖いくらいの傑作を書いたのは、28歳のときである。

一晩で書き上げたらしい。

この老成した感じはただ者ではないな(まあ、天才作家だからね)。

 

 

 

▶ キム・リッチーの『Long Way Back』を聴く。

 

Long Way Back: The Songs Of Glimmer

Long Way Back: The Songs Of Glimmer

  • アーティスト:Kim Richey
  • 発売日: 2020/03/27
  • メディア: CD
 

 

ワタシの、好きな女性アーティスト・ベスト3に入る。

新作。

ミドルテンポの曲が並ぶ。

やはり声が良いなあ。