▶『青春ア・ゴーゴー』を観る。
1966年制作の日本映画。
タイトルからして、なんか気恥ずかしい。
観る前から赤面してる。
観始めてから5分くらいは、その気恥ずかしさが続いたが、10分くらい観たころには映画に引き込まれていた。
これは面白い!
予備校生や電気屋の跡取り息子や出版配送のアルバイト生活者など、将来がはっきりしないモラトリアムな5人の若者が、バンドやろうぜ!ってなって、がんばる話。
幼馴染で同級生の賢一(山内賢)と悟(浜田光夫)は、いま流行のエレキ音楽に夢中だ。
もっとも悟が夢中なのは音楽ではなくて、賢一の妹の悠子(梶芽衣子)なのだが。
そのふたりに、ライブハウスで知り合った浩(和田浩治)らが加わり、バンドを結成することになる。
5人が、古ぼけた教会で練習していると、めちゃくちゃ歌のうまい謎の少女ユリ子(ジュディ・オング)が現れメンバーに加わる。
バンドとしての形がととのったところで、かれらは素人バンドの全国コンクールに参加し優勝を目指すことに…。
東宝の青春映画(たとえば若大将シリーズ)とかと違って、日活のそれはどこか憂いを含んでいて良い。
この作品にも“祭りの後”的な寂しさが漂っている。
それにしても、梶芽衣子が可愛い!
悟(浜田光夫)との仲をからかわれたときの、「惚れてなんかいませぬよーだ!」が、かなりの萌えポイントだ。
ここでやられない男は、ちょっとどうかしている“笑”。
ジュディ・オングも、なんなのコイツってくらい歌がうまい。
最後まで謎の少女のままってのも、なんかおかしい。
いまではあまり作られなくなった、ど直球の青春音楽映画である。
ちなみに、この映画が公開された1966年にビートルズが来日している。
おすすめ。
▶わたしが、「青春」って言葉を恥ずかしいと感じるようになったのは、いつ頃からだろう。
『愛と青春の旅立ち』というリチャード・ギア主演の映画が公開されたのが1982年で、そのときに「めちゃ恥ずかしいタイトルだな」と思ったのを覚えているので、1980年前後あたりかな。
いや、ちがう。
もっと前だな。
中学高校じだいにすでに、歌謡曲の歌詞などに「青春」という言葉が入っていると、背中がぞくぞくしていたので、その頃にはすでに「青春」に対するアレルギーがあったってことだ。
なぜだろう?
わたしは、自分と自分の置かれている状況を客観視すると言うか、俯瞰で見る癖のあるガキだったので(自意識過剰と表皮一体)、若さが本来もっている人生経験の少なさからくる無鉄砲さとバカバカしさのなかに自分がいることに耐えられなかったのかもしれない。
なんてませた(と言うか老成した)くそガキなんだ“笑”。
しかし、すっかり老人となり果てたいまでも、「青春」と言う言葉を聞くと少し背中がぞわぞわしてしまう。
おそらく、これは、若い頃の自分を思い出して、心のなかで赤面してしまうせいだろう。
この先、ボケボケになって、若い頃の恥ずかしい行動を思い出せなくなってはじめて、背中のぞわぞわは消えるのだろうな。
あっ、逆に若い頃のことしか思い出せなくなったら、ぞわぞわが毎日続くぞわぞわ地獄に陥るのか?
それは最悪だわ。
▶キース・ジャレットの『サンベア・コンサート』(1978)を聴く。
1976年のジャパン・ツアーのライブ記録。
レコード盤の時代には箱入り10枚組だった。
現在、CDで6枚組。
京都、大阪、名古屋、東京、札幌の公園がそれぞれ1枚ずつにまとめられている。
6枚目は、札幌、東京、名古屋のアンコール演奏。
すべての演奏が比類なく美しい。
「芸術の目的は、瞬間的なアドレナリンの解放ではなく、むしろ、驚嘆と静寂の精神状態を生涯かけて構築することにある」と言うグレン・グールドの有名な言葉を、そのまま体現しているような音楽である。
最長の演奏時間は、京都のPart1で約45分。
即興演奏でこの時間は凄い。
ときどき次の音をさがしてるようなときがあるが、そこもまた良い。
東京公演でのアンコール演奏が好き。
強面のジャズ・ファンが「あんなのジャズじゃねぇ!」って怒るのも無理はないほど、クラシックだ。
くり返すが、とんでもなく美しい。