▶『帰れない二人』を観る。
2018年制作の中国映画。
ジャン・ジャクー監督の最新作。
主演は中国の吉行和子(顔が似てると思うのだが)チャオ・タオ。
2000年から2017年までの中国を舞台に語られる愛の物語。
チャオ・タオ演じるチャオは、ヤクザ者のビン(リャオ・ファン)に惚れている。
ふたりで踊ったり、酒を飲んだり、いちゃいちゃしていればそれで幸せだったのだが、ある日突然、その幸せが終わってしまう。
街でチンピラの集団に襲われるビン。
チャオは、咄嗟にビンの拳銃を取り出し、空に向けて撃つ。
チャオによって命を助けられたビンだが、拳銃の違法所持でチャオは刑務所へ行くことになる。
5年の刑期を終えて出所して、ビンを訪ねるチャオ。
しかし、ビンは会おうとはしない。
すでに別の女がいたのだ。
傷心のチャオは街を離れ、故郷の大同に帰る。
そして2017年、ビンがチャオの元に戻って来る…。
トーンは終始静かで、世界の中心で愛を叫ぶことはない。
画面にはリアルな中国の今が映し出される。
その風景のなかを、チャオとビンの人生が漂っていく。
ラスト、どうやって終わらせるんだろうと思っていたら、うーん、かっこ良いな。
▶King of Convenience の『Riot On An Empty Street』(2004)を聴く。
ノルウェーのアコースティック・デュオ。
おしゃれやわ~。
▶片岡義男の『彼らを書く』を読む。
“彼ら”とは、ザ・ビートルズ、ボブ・ディラン、エルヴィス・プレスリー。
それぞれのライブ映像とか、出演した映画、あるいは関連した映像作品を観て、その感想を書いている。
いかにも片岡義男らしい的確な表現で、観ている映像の詳細を文章にしている。
映像の文字起こし。
読みながら、映像が頭に浮かぶ。
そこに片岡義男の感想がストンと入ってくる。
ザ・ビートルズの章では、ナンシー・アレン主演の『抱きしめたい』をとりあげていて嬉しくなる。
ナンシー・アレンも、もう70歳かぁ…と、変な感慨にふけったりして。
ジョン・レノンの無名時代を描いた『Nowhere Boy』もちゃんと観ている。
ザ・ビートルズ、という呼称が一度もこの映画のなかにあらわれないのは、英断のひとつだと言っていい。ザ・クオリーメンの名は、教会のバザーの場面に、大きくあった。ザ・クオリーメンと書いた紙が、地面に置いた物品に立てかけられていた。ザ・クオリーメンの名は出すけれど、ザ・ビートルズの名は出さない、という判断だ。事実の断片をいくつもつなぎ合わせると、そこに生まれるのはひとつの美しいフィクションである、と教えてくれる映画だ。
評が的確過ぎて、うなる。
こういう的確さが、この人を日本で最高の短編作家のひとりにしているのだろう。