▶『放浪の画家 ピロスマニ』を観る。
1969年制作のグルジア映画。
孤高の画家ニコ・ピロスマニの半生を描いた伝記映画。
ピロスマニは、現在ではジョージア(グルジア)の国民的画家として愛されているが、生前には富も名声も得ることはなく、正当な評価も受けないまま、56歳で貧困のうちに世を去っている。
田舎から街に出てきて、商売を始めるも人付き合いの下手さから上手くいかず、けっきょくは街の酒場を渡り歩きながら、生涯絵だけを描いて暮らした。
映画はほとんどが引きの絵で、アップはない。
画面ひとつひとつが、まるでピロスマニが残した絵のように美しく、ときどきホーッとため息をついてしまう。
画面から伝わってくるグルジアの空気感がすごい。
日本や中国の風景とは違う、乾いた孤独感のようなもの。
映画のなかでときおり聞こえる生活音が、アジアのそれとはあきらかに違う。
椅子を引く音、食器のたてる音、ワインをそそぐ音、ひとが歩く音、ドアの開け閉めの音…すべてが、どこか乾いていてる。
乾いているのに、温かい。
アジアの映画から聞こえてくる生活音は、かならずではないにしろ雑音がいっしょに聞こえてくるが、この映画から聞こえてくる生活音には、その雑音がない。
ひとつひとつの音が、その音のみで存在している感じ。
静かで、孤独で、しかし温かい。
こういう空気感のなかから、ピロスマニの絵は生まれたんだな、と勝手に思う。
ちなみに、この『放浪の画家ピロスマニ』が公開された1969年、遠くアメリカでは、『真夜中のカーボーイ』『イージー・ライダー』『明日に向かって撃て!』『ワイルド・バンチ』が公開されている。
アメリカン・ニューシネマの幕開け。
そして、シャロン・テートが無惨に殺害された年。
とても同じ時代に作られた映画とは思えない。
観終わったあと明るい気分になれる映画ではないが、ときおり無性に観たくなる。
▶ Tanita Tikaram(タニタ・ティカラム)の『ACOUSTIC』(2018)を聴く。
代表曲をアコースティック・バージョンで再録。
声が好き。
デビューから30年、地味だけど息の長いシンガー。
いちばん有名な曲のミュージックビデオ。
その曲の弾き語り。
▶サフランの、小さいけど大物って感じが、なんか良い。