▶『侍』を観る。
1965年制作の岡本喜八監督作品。
先日観た同監督の『斬る』とは違って、こちらは重厚な時代劇。
主演は三船敏郎。
そのほかに、小林桂樹、伊藤雄之助、松本幸四郎、新珠美千代、東野栄治郎、志村喬など、脇役が豪華だ。
この頃の日本映画を観るたびに、俳優陣の層の厚さに驚く。
脇役の役者たちのほとんどが、主役をはれる人たちなのである。
いまの日本映画とのいちばんの違いは、(監督の質とかではなく)この俳優たちの層の厚さの違いなのではないか、と思う。
舞台は、幕末。
江戸城桜田門の外、時の大老井伊直弼を討とうとする水戸藩士の集団のなかに、新納鶴千代(三船敏郎)という、ひとりの浪人者が混じっている。
井伊直弼暗殺の手柄を立て、水戸藩にとりたててもらおうと言う腹づもりなのだ。
しかし、井伊はなかなか姿を現さない。
ひょっとしたら、水戸藩士たちの動静が井伊側に漏れているのではないか?
疑心暗鬼にかられたかれらは、首領星野(伊藤雄之助)の命のもと、謎の浪人の身辺をしらべ始める…。
新納鶴千代が哀しすぎる。
かれの出生の秘密、新珠美千代扮する菊姫との身分違いの悲恋、そして井伊直弼を殺して立派な侍になろうとするが、井伊直弼を倒すことによってかんじんの侍の時代が終わってしまうという悲劇…。
ラストの桜田門外での泥臭い殺陣が素晴らしい。
この殺陣を観るためだけに、この作品を観てもよいくらいだ。
▶ Robbie Dupree の『Robbie Dupree』(1980)を聴く。
デビュー・アルバム。
シングルカットされた「Steal Away」が大ヒット。
でも、まぁいわゆる一発屋ですよね。
このあと同じアルバムから「Hot Rod Hearts」って曲がそこそこヒットするが、その後は、これといったヒット曲はない。
でも、ショービスの世界で、しぶとく生き残ってはいる。
この2枚目シンガーが、後にこういう爺さんになる(腹出てるやん)。
さいきん1980年代(つまり、わたしが20歳代の頃)の音楽を聴きなおしている。
とうじはAORと呼ばれる音楽がヒットしていて、この「Steal Away」もそういう曲のひとつだった。
久しぶりに聴くと、なかなか良いじゃないかと思うが、いちど聴いたらあと20年くらいは聴かなくても良いかな、とも思う(とっくに死んどる)。
耳に気持ちよく、すーっと流れて、なんの引っかかりもないんだよねぇ。
まあ、とうじはそれが良かったのだが…。
▶ ちかくのブックオフで2冊ゲット。
『さらば愛しきサスペンス映画 / 逢坂剛、川本三郎』(2012年 七つ森書館)
『世界100物語 第5巻 / サマセット・モーム編』(1997年 河出書房新社)
どちらも500円で、状態も良い。
『世界100物語』は、サマセット・モームが選んだ100編の名作短編小説をテーマごとにまとめたもので、全8巻。
あと第6巻を手に入れればコンプリートである。
以前、『世界文学100選』という(A5版くらいのサイズで緑色の函に入っていた)5冊本として出ていたのだが(そのときはテーマごとの分類ではなく、年代順だったと記憶する)、なにしろ活字が小さく、老眼と乱視がひどくなってからは読み返すこともできない有様なので、かなり昔に処分してしまったのである。
で今、新しい版を古本屋で見つけては、買いなおしているのだ。
ちなみに、『世界文学100選』(全5巻)は、いまは入手が難しく、そこそこの値段がついている。
辻邦夫という作家の最初の仕事が、この選集に収められた作品の翻訳なので(ほうんとうかな?)、それを知っている古本屋さんは高値をつける。