▶『映画よ、さようなら』を観る。
2010年制作のウルグアイ映画。
モノクロ。63分。
主人公のホルヘは、独身の中年男。
ミニシアター「シネマテーク」に長年勤め、上映プログラムの選定、映写、貴重な映画の保存、広報、機材のメンテナンスなど、作業のすべてをほとんどひとりでこなしている。
こういう施設の大半がそうであるように、「シネマテーク」も財政難で、存続の危機に瀕していた。
なにしろ上映プログラムが、「アイスランド映画特集」とか「マノエル・ド・オリヴェイラ監督特集」とかなので、コアな映画ファンしかやって来ないのだ。
ラジオ放送で新規の会員を募るも焼け石に水。
ある日突然(じゅうぶんに予想されていたことだが)、出資者から“これ以上金は出せない”宣言をされ、「シネマテーク」はあえなく閉館。
最後の日、ホルヘは身の回りの物を鞄に詰めて、「シネマテーク」をあとにする。
乗ったバスのなかでは、思わず涙ぐんでしまい、乗客から奇異の眼で見られてしまう。
あてもなく街をさまようホルヘ…。
映画の前半は、堅苦しい映画論が語られるシーンもあり、ぜんたいに重苦しい雰囲気が漂う。
ホルヘの態度にも、映画を楽しむと言うよりは、貴重な映画を多くのひとに観てもらいたいという使命感があふれている。
が、「シネマテーク」を去ったときから、かれのこころに変化が訪れる。
美容室で髪をカットし、その店に意識的に鞄を置き忘れるホルヘ。
「シネマテーク」での自分を捨てたのだ。
身軽になったホルヘ。
ずっとこころを寄せていた大学教授のパオラを学校にたずねるホルヘ。
デートに誘う気なのだ。
いままでは、コーヒーに誘うことも満足にできなかったのに、急に大胆だぞ、ホルヘ。
パオラを待つあいだ、学校の階段で踊り出してしまうホルヘ。
大丈夫か、ホルヘ?
仕事が終わり同僚と出て来たパオラにホルヘが歩み寄る。
おどろくパオラ。
そりゃそうだろう、いままで内気だった男が、急に自信満々なかんじで自分の前に現れたのだ。
そして、ホルヘがパオラに言う。
「どう、これから映画でも観ない?」
コーヒーでも、ディナーでもなく、“映画”である。
ホルヘにとって映画は、映写するものから観て愉しむものに変わったのだ。
少し戸惑いつつOKするパオラ。
おめでとう、ホルヘ!
街の雑踏のなかに消えて行くふたりを映して、映画は終わる。
正直、この映画がなにを言いたいのかはイマイチわからないのだが“笑”、ホルヘが幸せになりそうな予感がするので、良しとしよう。
ハッピーエンドを予感させる映画は、内容がどうあれ、それは良い映画なのだ。
▶ Deep Purple の『Made in Japan』(1972)を聴く。
むかしのサイレント映画をよく観るのだが、いつもディープ・パープルの曲を流しながら観る。
サイレント映画には、たいていクラシック音楽が劇伴として付いているのだが、そんな毒にも薬にもならない音楽よりか、ディープ・パープルの激しいリズムのほうがずっと良い。
ビートルズとかストーンズとか、バート・バカラックとかカーペンターズとか、あるいはアバとかU2とか、いろいろ試したのだが、いまのところディープ・パープルがいちばんのお気に入りである。
サイレント映画特有の、ちょっと前のめりな感じのスピード感にディープの曲がよく合ってる気がする。
とくに美女が悲鳴をあげているようなシーンで流れる「Highway Star」は最高である。
▶ Netflixで『カウボーイ・ビバップ実写版』の配信がスタート。
全10話の半分まで観てみたが、うーん、微妙だなぁ。
セットがショボく、アクションがダサく、話もうまく回っていない気がする。
良いのは、吹き替えの声優(アニメ版と同じ)と、菅野よう子の音楽と、キャラ完璧再現のアインだけかな。
まっ、最終話まで観るけど。
正直、がっかりだわ。
とくにビシャスがひどい。
アニメの設定では27歳の美青年なのに、実写版は筋肉マッチョの中年オヤジだ。
萎える。