▶『賭博常習者 / 園部晃三』(講談社)を読む。
だらだらちまちまと本を読むわたしが、めずらしく一気読み。
いやあ、面白かったな。
幼い頃、生産牧場を経営する叔父に競馬の面白さを教えられ、それ以来競馬の魅力に翻弄され続けた著者の自伝小説。
なんども人生の壁にぶち当たりながら、不思議な縁で道が開けていく。
開けはするのだが、自らの弱さでその道を再び閉ざしてしまう。
アメリカに渡りカウボーイになったり、乗馬クラブで成功したりもするが、ギャンブルにのめり込んで全て駄目にしてしまう。
けっきょくは、家も仕事も失い、車中泊をしながら全国の競馬場を渡り歩く生活に。
客観的にみれば、典型的なクズ男なのだが、そのクズっぷりが無類に面白い。
ほとんどの登場人物が死んでいく物語でもある。
著者に競馬を教えた叔父をはじめ、親しくなったばくち打ち、年上の愛人、ともに競馬を戦った親友、アメリカで世話になったカウボーイ…など、ほとんどの登場人物は亡くなり、最後には著者だけがポツンと残されている。
漂う虚しさは、競馬で有り金を失くしたときの虚しさと少し似ている。
著者は、1990年に『ロデオ・カウボーイ』という作品で小説現代新人賞を受賞している。
その後、競馬の予想記事やコラムなどでなんとか糊口をしのいでいる時期に、賞の審査委員だった北方謙三と会う。
そのとき北方謙三に「どうやら色んな雑誌に君のエッセイやコラムが載っているようだが、マガジンライターにするために新人賞をやったんじゃないぞ」と言われてしまう。
「早く名刺になるような代表作を書け」とハッパをかけられるのだが、その後も著者は迷走し続ける。
この本が出版されたのは、2021年である。
新人賞を受賞してから30年経って、やっと代表作が書けたのかもしれない。
しかし、ジェフリー・アーチャーの言葉によれば“作家は3作目が勝負”(アーチャーの3作目は「ケインとアベル」)だそうなので、次が代表作になるのかも知れない。
まっ、競馬に寄り道しなければ、の話だが。
▶そろそろ、夏競馬が終わる。
毎年そうだが、夏競馬は当たらない。
まったく当たらない。
ならばやらなければ良いのだが、そういうわけにはいかないのだ。
なぜなら、馬は走っているのだよ(イミフ)。
なぜなら、競馬は開催されているのだよ(イミフ)。
やらないわけにはいかんのだよ。
くそっ、横山和生くん、なぜもっと前に行かない?
ルメールさん、忘れた頃に来ないで下さい!
それにしても、Yogiboを枕にするアドマイヤジャパンくんの姿はなんど見ても癒されるなぁ…。