▶5時頃起床。
寝床の中で、グズグズと競馬新聞を眺めて小一時間過ごす。
今日は、菊花賞の日である。
この長距離レースが終われば、年末の有馬記念まで、つるべ落としのように時間が過ぎていく。
文字通り、「あっ」と言う間である。
自分の年齢のことを考えると、有馬記念を楽しめるのは、あと10回くらいか…。
それを考えると、これからの日々が極めて貴重に思えてくる。
まっ、いくら貴重に思えたとしても、ダラダラと過ごすことに変わりはないのだが。
うんうんと唸りながら寝床から立ち上がる。
腰痛のせいで立ち上がるまでが大変なのである。
いちど垂直な状態になれば、あとはなんとか動ける。
いつか立ち上がれなくなる日が来るのだろうか?
それを考えると漠然とした不安で胸がつぶれそうになるが、とりあえず熱い珈琲で不安を洗い流す。
朝の苦くて暑い珈琲が美味しければ、その日はそれだけで1ポイント獲得である。
▶朝食のあと、ムルナウ監督の『最後の人』を観る。
サイレント映画には付きものの“字幕”が一切ない。
完全に映像だけで観せていく。
凄い作品なんだろうけど、その凄さがイマイチわからない。
とうじの映画人が、「この撮り方は凄い!」と思った部分がどこなのか、さっぱりわからないのである。
とうじ革新的だった部分は、後のひとがさんざん使っているので、それを観慣れた身としては、「ここが凄いんですよ」と指摘されたとて、あまり新鮮味はない。
まあ、知識としては理解するが、驚きはない。
ストーリーも、なんかしょぼいし。
天才監督ムルナウに対して、ひどい感想だがw
▶ルシア・ベルリンの『すべての年、すべての月』(講談社)を読む。
先日読んだ『掃除婦のための手引き書』とおなじく、かなり高密度な短編集。
捨て曲がひとつもない。
なぜ、こんなにも凄い作家が、亡くなるまでほぼ知る人ぞ知る的存在だったのか、謎である。
ルシア・ベルリンという作家は、傑作だけを書いて亡くなったわけだ。
凄いな。
レース中継を見ながら、多くのひとが「ルメールかい!」と叫んだはずである。
ダビー馬のダノンデサイルは伸びを欠いて6着に沈んだ。
やはりダビー馬が菊花賞を勝つのはむつかしいのかな(ダービーも菊花賞も勝った馬は、ナリタブライアン、ディープインパクト、オルフェーブル、コントレイルと錚々たる面子である)。
わたしは、アーバンシック(2番人気-1着)とビザンチンドリーム(9番人気-5着)のワイドを買って撃沈したが、ビザンチン君が良いところまで来てくれて嬉しい。
それにしてもビザンチン君は、相変わらず真っ直ぐ走れないねぇ。
ちなみに菊花賞が終わった時点での、わたしの今年の競馬成績は、的中率16.9%、回収率232.2%で、けして悪くはない(軽く自慢)。
▶夕食のあと、出汁をとったあとの昆布(冷凍庫に溜めている)で佃煮作り。
いつもはテフロンの小鍋で作るのだが、今回は鉄製の中華鍋で作ってみた。
まず昆布がかぶるほどの水を入れ、そこに酢を入れて煮る。
水分がとんだら、水と醤油、みりん、黒砂糖を適当にぶちこみ、水気がなくなるまでコトコトと煮る。
出汁ガラの昆布で作ると、市販の佃煮より昆布の風味が強くて美味いのである。
▶就寝前に、西村賢太の『誰もいない文学館』(本の雑誌社)をパラパラと読む。
タイトル通り、誰も知らないような物書きについての随筆集。
藤澤清造や大坪砂男、村山槐多、尾崎一雄などビッグネームもあるが、倉田啓明、横川巴人、久鬼高治とか、誰?って物書きも多い。
面白いのだが、ひとりにつき5頁という短さは、いささか物足りない。
雑誌連載だったせいかも知れないが、できれば単行本化にさいし加筆して欲しかった。