▶今日も山中貞雄の映画を観る。
まともに現存する作品が3本しかないというのは何とも寂しい。
そのうちの1本、『丹下左膳余話 百万両の壺』。
おなじみ丹下左膳、と言っても今ではまったくおなじみではないのであるが(笑)。
片腕碧眼の凄腕浪人、「姓は丹下、名は左膳」(←これが決め台詞)が活躍する時代劇である。
百万両という大金の隠し場所を塗りこめた古い壺を巡っての大騒動。
過去に何回も映画化、あるいはTVドラマ化されているだけあって、ストーリーはよく出来ていて飽きさせない。
やや古臭いBGMをうるさく感じる場面があるものの、山中貞雄の演出は、これが20歳半ばの若造が撮る映像かよと驚くほど老成している。
気になったのは、ヒロイン役の矢場(江戸から明治にかけ流行ったの遊興施設。女を侍らせて小さな矢を的に当てて遊ぶ。なーにが楽しいのかイマイチわからんが。まあ、裏で売春とかもやってたようです)の女将。
演じているのは、新橋喜代三(しんばし・きよぞう)。
名前が男名前だが、れっきとした女優である。
元売れっ子芸者で、美貌と酒の強さで人気があったらしい。
たしかに、美しい。
美人は気になるので調べてみた。
なんと、若い頃、まだ無名に近かった木村伊兵衛(後に有名な写真家となる)の恋人だったのだね。
うーん、やるな伊兵衛。
で、なんだかんだあって木村伊兵衛とは別れて、売れっ子の芸者&歌手&女優となる。
さらに驚いたのは、彼女、作曲家の中山晋平の後妻(前妻は病没だが、その前から愛人関係にあったらしい)に収まっているのだ。
周囲の反対を押し切っての結婚だったらしいが、最後まで添い遂げている。
うーん、やるな晋平。
かんじんの映画のほうに話を戻すと、主演の大河内傳次郎は、顔がでかい(笑)。