▶午前5時起床。
いつものように珈琲を飲みながら、しばらくぼんやりと過ごす。
このぼんやりと過ごす時間を、ときどき「もったいないな」と思ったりもするが、じゃあ、ぼんやりしないで何をするのかと言えば、けっきょく何もしないので、べつにもったいなくはないのだ(うだうだと何を言ってるのか、自分でもよくわからんが)。
▶映画を1本。
“惚れたはれた”の群像劇。
「一分の隙も無い」とは、こういう映画のことを言うのだろうな。
脚本も映像も間然するところがない。
しかし“面白い”よりも“凄いな”が先にたって、純粋には楽しめなかった。
喜劇が悲劇で、悲劇が喜劇なあたり、これはシェイクスピアなんだろうなぁ。
道化も出てきて、舞台を引っ掻き回すし。
▶雨の中、歩いて上野の東京都美術館へ。
「エゴン・シーレ展」を観る。
20歳にしてすでに画風が完成されている。
天才やね。
死後に評価されたわけじゃなく、生前に高評価を受け、これからというときに、妊娠中の妻と共にスペイン風邪で亡くなっている。
享年28歳。
若すぎる。
ドローイングが、驚くほど巧い。
ちょっと神がかっていて、鳥肌がたった。
1本の線で、対象のすべてが描けてしまうって、どういう気分なんだろう?
ジャンルは違うが、才能の在り方が、若き日の(パリ時代の)ヘミングウェイと似てる気がした。
シーレの絵をたくさん見たかったのだが、同時代の画家の絵で水増しされた感じで、展覧会としては、少し消化不良気味である。
アメ横で寿司を食べ、降ったりやんだりの雨の中、歩いて帰る。
▶ホセ・ジェイムズの『On and On』(2023)を聴く。
エリカ・パドゥの曲を歌ったカヴァー集。
相変わらず良い声だなぁ。
キーボードは平野雅之(BIGYUKI)。
むかしからカッケー。
▶寝る前に、寺田虎彦の随筆を少し読む。
寺田寅彦は、天才ではない。
夏目漱石や内田百閒と同じく漱石門下だが、かれらのように才気走った感じはない。
小説家ではなかったせいかも知れないが、それだけに文章は柔らかく、読み手のこころに水のように沁み込んでくる。
なにしろ、天気が良い日に妻と歩きながら、「人間の心が蒸発して霞(かすみ)になりそうな日だね」とか言っちゃうようなひとなのである。
こんな優しい言葉を、わたしも呟いてみたいものです。
寝る前に読むには最適の文集。