▶ タランティーノ監督のデビュー作から3本、まとめて観た。
すべて公開時に劇場で観ていて、とうじはまったく新しい才能が出てきたことに、かなり興奮した。
01. 『レザボア・ドッグス』(1992)
冒頭、映画の本筋とはまったく関係のないカフェでの無駄話からの、いきなりティム・ロス血まみれという流れが、やはりめちゃくちゃかっこ良い。
元ネタと言われる香港映画『友よ風の彼方に』のかっこ良い部分だけを取り出して洗練させた感じ。
派手なアクションシーンなんてほとんどない、どちらかと言うと地味な会話劇なのに、しかもその会話の内容が本筋とほとんど関係ないにもかかわらず、1本の映画として見事に成立しているというのは、やはりタランティーノのセンスゆえなんだろうなあ。
世界中がこのセンスに興奮したのだ。
そして、なんと言ってもハーヴェイ・カイテルの存在感よ、と思う。
02. 『パルプ・フィクション』(1994)
デビューから2作目にして、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した傑作。
初めて観たときは、ラストで「そう来たか!」とうなった。
2度目からは、とうぜん細部のディティールを楽しむことになる。
ジョン・トラボルタのダンスとか、サミュエル・L・ジャクソンのパーマかつらとか、ふたりの深いのか浅いのかよくわからん会話とか、ブルース・ウィルスの困り顔とか、おかもを掘られているヴィング・レイムスとか、トマトのジョークを解説するユマ・サーマンとか、そういうところをニヤニヤしながら観る。
“映画変態養成ギプス”的な映画ですね。
さいきん、若いひとの書いている映画ブログを読んでいたら、「パルプ・フィクションは、つまらなくて途中で観るのをやめた」と書かれていて、ちょっと驚いた。
つまらない要素なんてどこにある?と思うが、10分に1回爆発が起きるようなハリウッド映画を観慣れているひとからすると、あるいは退屈かもしれないとも思う。
映画の半分は、くだらない無駄話だからなあ。
でも、好きなひとには、そこがたまらない魅了なんだが。
03. 『ジャッキー・ブラウン』(1997)
タランティーノ作品のなかでは、いちばん好きだ。
冒頭の長回しのシーンから、おおっ、映画が始まる!って感じで、わくわくする。
原作はエルモア・レナードの『ラム・パンチ』(読んだことはあるが、まったく記憶にない…)。
レナードは、かなり複雑なツイストをお洒落に決めてくる作風(レナード・タッチ)なので、タランティーノとの相性は良いのかもしれない。
主演のパム・グリアーが良い。
が、武器の密売人役のサミュエル・L・ジャクソンは、もっと良い。
歩き方、喋り方、顔の表情、ファッション(辮髪のようなあごひげ!)すべてが素晴らしい。
デ・ニーロは、相変わらずの安定感。
最後に、ジグソーのピースがひとつずつはまっていく感じの気持ちよさは、タランティーノと言うより、原作者のエルモア・レナードのタッチのような気がする。
▶ The Delfonics の『The Delfonics』(1970)を聴く。
タランティーノ監督の『ジャッキー・ブラウン』で印象的に使われていた。
ひげもじゃ男のシルキーボイス。
素敵。
▶ タランティーノ監督の初期の3作を観返して思ったのは、どこかフランス映画の、それもヌーヴェルバーグ時代のフランス映画のにおいがするなあ…ってこと。
とくにゴダールの。
天衣無縫なセンスとか、遊び心にあふれた編集とか、音楽の使い方とか、いろんなところにゴダールっぽさを感じた。
自身の制作会社の名前にゴダールの「Band A Part」を使っているくらいだから、ゴダール大好きなんだろうな。
1960年代の映画ファンがゴダールに感じた興奮と、1990年代の映画ファンがタランティーノに感じた興奮は、あるいは似ているのかも知れない。