▶『テルアビブ・オン・ファイア』を観る。
2018年制作のイスラエル映画。
イスラエルが、ガザ地区をがんがん空爆中のこの時期においては、少し不穏なタイトル。
映画のジャンル分けはコメディとなっているが、観ていてクスリともできなかった。
つまらないわけではない。
コメディとして観なければ、けっこう面白い映画なのだ。
パレスチナで大人気のメロドラマ「テルアビブ・オン・ファイア」の現場で、ヘブライ語の言語指導スタッフとして働いている。
と言っても、プロデューサーである伯父のコネで何とかありついた仕事だ。
サラームは、仕事の往復時、毎回イスラエルの検問所を通過しなければならない。
住んでいるエルサレムはイスラエル領で、撮影スタジオはパレスチナ側にあるためだ。
ある日、いつものように検問所を抜けようとしたとき、ちょっとしたトラブルから軽い尋問を受けることになってしまう。
相手は、イスラエル軍の司令官アッシ、検問所の責任者である。
なんとか検問所を通り抜けたいサラームは、職業を訊かれて、「テルアビブ・オン・ファイア(TAOF)」の脚本を書いていると嘘をついてしまう。
目を輝かせるアッシ。
「TAOF」はイスラエルでも大人気で、アッシの妻も毎回かかさず観ている。
その脚本家が目の前にいるのである。
アッシは、サラームと一緒に写真を撮り、かれが持っていた次回分のシナリオを没収する。
家に帰って、妻に自慢するためだ。
さいきん夫婦仲が微妙に冷めているので、良いところを見せて、気をひきたいのである。
毎日冴えない日々を生きるサラームだったが、転機が訪れる。
メインの脚本家が降板し、その役がサラームに回って来たのだ。
ちょっとしたアイデアを話したら、それが気に入られ、伯父によって大抜擢されたのである。
しかし、脚本など書いたことがない。
パソコンの前に座ってはみたものの何ひとつアイデアが出てこない。
思い悩んだかれは、検問所のアッシに会いに行く。
「テリアビブ・オン・ファイア」というドラマは、イスラエル軍部に忍び込んだパレスチナ側の女スパイと、イスラエル軍将校の恋愛を軸にしたメロドラマである。
イスラエル軍に詳しいアッシなら、なにかアイデアがあるはずだ。
相談を受けたアッシは、がぜん乗り気になり、次から次にアイデアを出してくる。
サラームは、そのアイデアをもとにシナリオを書き、スタッフにも認められていく。
が、徐々にアッシの要求がきつくなってくるのだ。
アッシは、イスラエル側の軍人なのでイスラエル軍の将校をかっこよくしたいし、最終的にはイスラエルの勝利で終わらせたい。
しかし、ドラマはアラブ人がアラブ人のために作っているので、製作者たちは、女スパイとその背後にいる反イスラエルの恋人(テロリスト)を良く書きたいし、最終的にはパレスチナ側の勝利で終わらせたい。
両者の思惑のはざまで悪戦苦闘するサラーム(どうやら、ここが笑うポイントらしい)。
しまいには、サラームは大事なIDをアッシ取り上げられてしまう。
「女スパイとイスラエル軍将校を結婚させろ!俺の言うとおりに書かないとIDは返さない!」
せっぱつまったサラームは、ある秘策を思いつく…。
サラームの、“冴えない男ぶり”が凄い。
これほど冴えない感じの主人公もめずらしい。
冴えない感じだけど、じつは裏では冴えてる、とかじゃなくて裏表なく冴えてないのだ。
元カノのことをまだ愛していて、なんとかヨリを戻したいのだが、うまくいかない。
だいたい彼女に、「君といると死海の魚になったような気分だ」とか言っちゃう奴だからなあ。
ところが、物語りが進むにつれて、この超絶冴えないサラームが少しかっこ良く見えてくるから不思議だ。
たとえば阿部寛が冴えない男をやって、途中からかっこ良くなったとしても、元々が阿部寛なので、言うなれば元に戻っただけなのだ。
たいていのラブコメとかは、主役の男や女は最初からかっこいいのだ。
かっこいい男や女が冴えない男や女を演じていいるわけだが、我がサラームくんは、ほんとうにダメな感じなんだよねぇ。
さいごまでそのダメな感じは抜けてない。
にもかかわらず、少しかっこ良くなってる(女優に、一緒にパリに行かない?とか誘われちゃうし!)。
ラストのオチは衝撃的。
ドリフのコントならセットが崩れて大騒ぎになるところ。
観ると、イスラエル対パレスチナのもんだいも、少し知ることができる。
少しだけだけど。
▶ Eva Cassidy の『Songberd』(1998)を聴く。
1996年に癌により33歳の若さで他界。
生前はほぼ無名。
このアルバムは死後に編集されたベスト盤。
アルバムが出されてから約4年後にイギリスから火がつき各国でトップテン入り。
彼女も「死なないと有名になれない呪い」をかけられたアーティストのひとり。
▶今朝、夢のなかに5年前に60歳でなくなった友人が出てきた。
「なんだよ! 生きてたのかよ!? 癌は治ったのか?」
と驚くわたしに、かれはニコニコしながらきらきらひかる5円玉を見せてきた。
「ん? なに?」
ときいても何も答えず、ただニコニコしている。
そこで目が覚めた。
これはなんだ?
5円玉…?
…そうか。
日曜のオークスは5番の馬、もしくは5枠の馬が来るって言うことだな。
ありがとう友よ、想いはたしかに受け取ったぜ。
(う~ん、なんか違うような気もするが…ほかに解釈が思いつかん)