▶わたしは競馬ファンである。
馬がスタートしてからの2分間が、わたしにとっては何より至福の時間だ。
馬券が当たれば、もちろん嬉しいが、競馬の楽しさは馬券だけではない。
ギャンブルとはべつの、類まれなドラマ性が競馬にはある。
ヘミングウェイは、「競馬は人生の縮図だ」と言い、寺山修司は「競馬は人生の縮図ではない。人生こそが競馬の縮図なのだ」と言った。
まあ、どちらも何を言ってるのか、よくわからないのだが “笑”。
天才ふたりに、意味不明なことを言わせるほど、競馬には不思議な魅力があるのである。
これから紹介する映画は、その競馬の不思議な魅力が、競馬のことをまったく知らないひとにも伝わるような映画である。
と言うか、伝われば良いなあと思う。
そして、ひとりでも多くのひとが、競馬のどろ沼に入り込むことを願っているのである。
2010年制作のアメリカ映画。
世界競馬史上屈指の名馬セクレタリアトと、揺るぎない信念で、かれを23年ぶりの三冠馬へと導いた女性馬主の物語。
父親が亡くなり、売りに出される寸前の赤字牧場を引き継いだペニー・チェネリー(ダイアン・レイン)。
競馬にはズブの素人の主婦だが、父の残した牧場を守ろうと孤軍奮闘する。
そんな彼女の牧場で1頭の仔馬が生まれる。
のちに世界最強とうたわれるセクレタリアトである。
邦題には “奇蹟” と入っているが、奇蹟的な要素はそれほどはない。
唯一あるとしたら、短距離血統の馬から長距離もこなせる馬が生まれたことか。
(サクラバクシンオーの血統からキタサンブラックが生まれたみたいな?)
そしてその馬が、負けん気の強いペニーのもとに生まれたことか。
三冠レースの最後、ベルモントステークスでのセクレタリアトは、まさに化け物だな。
2着馬との着差が31馬身ってなんだよ “笑” 。
映画は、偏屈な調教師(ジョン・マルコヴィッチ)や、誠実な調教助手(勝てないと言われたケンタッキーダービーの前夜、競馬場に向かって「待ってろケンタッキー!ぜったいに勝ってやるからな!」と叫ぶシーンは感動的)など、キャラもはっきりしていて、競馬を知らなくても楽しめる。
2本目 『ライド・ライク・ア・ガール』
2020年制作のオーストラリア映画。
舞台は、オーストラリアのメルボルンカップ。
オーストラリア最大のレースで、大都市圏では祝日となるほどの国民的レース(賞金総額は約6億円)。
日本で言うと、年末の有馬記念と春の天皇賞を足したようなレースかな。
メルボルンカップは160年の歴史があるが、そのうち女性騎手が優勝しことが一度だけある。
騎手の名は、ミシェル・ペイン。
この映画は、彼女の半生を描く。
男尊女卑の風潮が色濃く残る競馬の世界で、前人未到の記録を打ち立てた小さな巨人の物語。
2015年、第155回、騎乗した馬はプリンスオブペンザンス。
出走24頭中、人気は23番。
まあ、女性騎手が1世紀半も優勝したことがないレースだし、馬もそれほど強いとは思われてなかったし、この人気はしかたないか。
じっさいの映像はこちら。
彼女の馬は1枠1番(最内)で帽子は緑。
白いブリンカー(馬の視野を狭くするために顔に被せる)をつけている。
ちょっと出遅れてるね。
外枠だったら、この出遅れはひびいたかも。
終始内ラチ(内側の柵)沿いに中断を進むけど、途中で上手くすっと中に入っている。
あのまま内にいたら直線での抜け出しが遅くなったかも知れない。
直線に入る瞬間、プリンスオブペンザンスの前がフッと開くんだよねぇ。
なんど見てもぞくぞくする。
最後の直線は、勝つのがわかっていても感動的だ。
ゴールを駆け抜けた直後に、マイク片手のインタビュアーが馬に乗って駆け付けるのって面白いな。
インタビューにスティーヴ・ペインというダウン症の男性が出てくるが、ミシェルの実の兄で、映画では本人が演じている。
いやあ、いい映画でした。
ちなみに、2006年のメルボルンカップの優勝馬はデルタブルース。
2着がポップロックで、どちらも日本馬である。
地方競馬(園田)のジョッキーから、メルボルンカップの勝利ジョッキーまで登りつめるって凄いな。
岩田のくせにね “笑”!
3本目 『シービスケット』
2003年制作のアメリカ映画。
過酷な調教と数多くのレースにより本来の素質を生かせなくなった馬。
愛する者を亡くし、生きる希望を失った大富豪(ジェフ・ブリッジス)。
有刺鉄線の登場によりカウボーイ生活にピリオドを打たれた男(クリス・クーパー)。
そして、不況のため両親と別れ天涯孤独の身となり、人生を投げてしまった若者(トビー・マグワイア)。
3人の男たちと1頭の馬が、奇蹟のように出会い、生きることに喘ぐ多くの人たちに希望と勇気を与えていく…。
人と馬の、奇蹟の物語。
競馬映画の王道ですね。
全米を沸かせた、三冠馬ウォーアドミラブルとのマッチレースの映像。
スタートがかっこ良い。
▶「競馬映画のおすすめ3本」は、これがパート1で、パート2も(なんならパート3も)準備しているのだ!