▶『ノンストップ・バディ/俺たちには今日もない』を観る。
2014年制作のドイツ映画。
ティル(アクセル・シュタイン)は、真面目な銀行員だ。
ロックスターへの道を諦めた過去はあるが、それは胸の奥にしまって、妻と幼い息子のために日々働いている。
一方、ナッポ(モーリッツ・ブライブトロイ)は、根っからの犯罪者だ。
強盗、暴行などで前科がいくつもあり、自分勝手ですぐにキレる厄介な男だ。
ある日、ティルが働く銀行にナッポがやってきて、金を貸してくれと言う。
いかした車を買うためだ。
もちろん担保も何もない(これから買う車が担保だと言う始末)。
対応にあたったティルは、この無謀な相談を(話を真摯に聞くふりをしながら)やんわりと断る。
怒って銀行を去るナッポ。
しかし、ナッポは諦めてはいなかった。
次の日、こんどは銀行強盗として再びティルの前に現れる。
金を盗み、ティルを人質にとって車で逃走するナッポ…。
映画の冒頭は銀行強盗のシーンである。
警察が銀行を包囲して「銃を捨てて出てこい!」と叫んでいる。
銀行のなかでは、客たちが床に伏せて震えている。
が、ここでの銀行犯はナッポではない。
血が飛び散った顔で銃を握っているのは、なんとティルなのだ。
真面目なティルが拳銃を握りしめて警官と向かい合っているのだ。
いったい何があった?
そこからストーリーは、78時間前の、ナッポが金を借りに来る場面へと飛ぶ。
ほんとうにヤバイのは、ナッポではなく、じつは真面目な銀行員のティルだということが、ナッポにも、そして観ている者にも徐々にわかってくる。
こいつ、どうかしていると。
その、どうかしているティルと、根っからの犯罪者のナッポのあいだに奇妙な友情らしきものが芽生えていくのも、観ていて楽しい。
途中から、タイトル通り(ひどい邦題だが)バディ物になっていくのだ。
ラスト30分の、ティルの大暴れには唖然としつつも、思わず拍手。
ドイツ映画は、ときどき小粒ながら美味しい作品を出してくるので、要注意なのだ。
▶E.S.T. の『Seven Days of Falling』(2003)を聴く。
ピアニストの Esbjörn Svensson (エスビョルン・スヴェンソン)を中心にしたトリオだが、エスビョルンが2008年に事故で亡くなったため、現在は別のかたちで活動している。
代表曲のライヴ。
3人の間の緊張感がハンパない。
これから傑作をがんがん出していきそうな予感に満ち溢れていた矢先の事故死だったので、けっこうショックだった。
ピアノが良いのはもちろんだが、リズムのふたりも良いのよねぇ。
エスビョルンも少しうなり声を出すね。
良いピアニストは、みんなうなるのかな?
▶北京在住中国人の友人Sくんが、まだ日本で留学生活をおくっている頃、ふたりで焼肉を食べに行った。
そのとき、何気なく「いままで食べた肉のなかで、なにがいちばん美味しかった?」
て訊いたら、
「ロバです」と
即答された “笑”。
「ロバって、あのロバか?」
「この場合、指示代名詞の“あの”は、なにを指してますか?」(こういう喋り方をする)
「この場合の、“あの”は、一般的なロバですか?って意味だよ」
「そうです。ふつうに市場で売られているロバの肉です」
「日本では、ロバ肉はふつうは売られてないので、びっくりだよ」
「からだが凄くあったまるんですよ。犬肉ほどではないけど」
「やはり犬も食べるのか?」
「はい。東京でも売られてますよ」
「えっ?マジで?」
と言うことで、Sくんに連れられて池袋北口の中華食材専門のスーパーへ。
冷凍肉のコーナーに、たしかに犬の肉(切り身)があった。
“狗肉”ってラベルが貼ってあった。
羊頭狗肉の狗肉って、犬の肉のことだったのか…。
Sくんは切り身を手に取って、「あまり良い肉ではないですね。買わない方が良いです」とアドバイスしてくれたが、いやいや、良い肉でも買わないですよ。
ちなみに、そのときの焼肉代は、Sくんのおごりだったのだが、会計のあと「ごちそうさま。ありがとう」と言ったら、Sくんに軽く逆ギレされて驚いた。
「わたしとあなたは友達でしょう? わたしはあなたのことを日本の親友と思ってますよ? そうでしょう?」
「そうだけど…?」
「じゃあ、なぜお礼を言いますか? 日本語でなんと言いましたか…水くさい?」
「ええっ! 日本人はこういう場合ふつうにお礼を言うぞ。親しきなかにも礼儀ありなんだよ!」
「親しいのに礼儀っておかしくないですか?」
「じゃあ、どうやって感謝の気持ちを伝えるんだよ?」
「感謝の気持ちは伝えなくて良いです、友達なんだから。ただ、次はあなたがおごる番です」
なるほど。
そういうことか “笑”。