▶『こころの湯』を観る。
1999年制作の中国映画。
舞台は、北京の下町にある銭湯「清水池」。
朱旭(チュウ・シュイ)扮する父親リュウが、知的障害を持つ次男アミンとともに切り盛りしている。
そこへ、勤め人となって都会で妻と暮らす長男ターミンが突然帰って来る。
アミンが兄に送った絵葉書に横たわる父親が描かれていて心配になったのだ。
しかし、父親は元気だ。
アミンとともに毎日楽しく暮らしている。
ひと安心するターミンだったが、再開発によって銭湯が近々取り壊されることを知る…。
中国にも銭湯があることを、はじめて知った。
しかも日本の銭湯よりも充実している!
マッサージ、理髪、吸い玉治療、垢すり、等々。
ほとんどスパだね。
ここにご近所さんが毎日訪れて、中国将棋をしたり、コオロギ相撲に興じたり、シャワーの下でオペラを歌ったり、ときには夫婦喧嘩を始めたり、すごく賑やかだ。
その賑やかさを前に、ターミンのこころがゆれる。
おそらくは、実家が嫌で都会へ出たターミン。
しかし、銭湯で時間を過ごすうちに、こういう生活も悪くないかもしれないと、少しだけだが思うようになる。
そんなこころの揺れが、表情に出ている。
しかし、現実はそんなに甘くはない。
銭湯は、再開発による取り壊しが決まっている。
知的障害の弟の存在もある。
ターミンが妻とふたりで田舎で暮らせるわけはないし、妻が弟のことを受け入れるかどかもわからない。
そして、かれが都会に戻ることを決めたとき、父親が病に倒れる…。
ラストは、少し物悲しい。
アミンの歌うオーソレミオが泣ける。
長男ターミンのこれからの人生を思うと、思わず「頑張れ」と声をかけたくなる。
人生は、人と人の関係性のなかを歩いて行くもので、誰しもがけして独りぼっちでは生きていけないものなのだな、と当たり前のことを思う。
中国は、このひとを国宝にすべきだ。
主演映画のひとつに『變臉(へんめん)』という素晴らしい作品があるのだが、残念なことにいまだにDVD化されてない。
TSUTAYAの「発掘良品」に期待したいところだが、アジア系の映画はほぼ無視だからなあ…。
あと、気になったのは、銭湯のシーンのほとんどが男湯で、客もどうやら男しかいないようなのだ。
中国に、女湯はないのだろうか?
▶Help Yourself の『Help Yourself』を聴く。
1971年発表のデビュー・アルバム。
英国パブロックの名盤。
これと言ってキャッチーな曲があるわけではないが、さりとてダメな曲があるわけでもない。
最初に聴いてから、かれこれ30年以上も、ときどき引っ張り出しては聴いている。
このアルバムは、たしか吉祥寺の「芽瑠璃堂」というレコード屋で買った。
芽瑠璃堂は、1980年代すでにその筋(どんな筋?)では超有名店で、入るのに少し勇気がいった。
ブルースやらパブロックあたりをかじりはじめた若造が、安易に入っちゃいけない店だという印象があったんだよねぇ。
はじめて店に入ったとき、奥にいた店員さんが、ジャムパンをむしゃむしゃ食べながら、ギロっとこっちを睨んできて、ちょっと怖かったな “笑”。
通いなれたら、フツーにやさしく、音楽にやたら詳しい店員さんたちだったけど。
こちらはサード・アルバム。
ジャケットのデザインが時代を表している。
▶気になるので書いておく。
『こころの湯』のなかに食事のシーンが出てくる。
都会から戻ったターミンが父親と汁なし麺を食べているのだが、片手に生のきゅうりを1本持っていて、ときどきそれをかじるのである。
日本では、まず出会わない光景だ。
以前観た『私の犬は世界一』という中国映画でも、同じようなシーンがあったのだが、中国ではふつうのことなんだろうか?
ウー・ウェンさんという料理研究家の本に、中国は飲み水の質が良くないので、水分補給のためにきゅうりを食べると書いてあったのだが、そういうことと関係あるのだろうか?
けっこう気になる。