▶『メアリー&マックス』を観る。
2009年制作のオーストラリア映画。
オーストラリア、メルボルンの郊外にひとりの少女が両親と暮らしていた。
メアリー・ディンクル、8歳。
冒頭、少女が窓から外を覗いている場面で、ナレーションがかぶる。
「メアリーの目は、泥の水たまり色。ひたいのアザはウンチの色だ」
ひどいな “笑”。
父親は工場でティーバッグを作っていて、拾ってきた鳥の死骸で剥製を作るのが趣味だ。
母親は、アル中で万引き癖がある。
「あんたは、たまたま生まれた子よ」と、メアリーは母親に言われて育った。
メアリーには友達はいない。
学校ではいじめられている。
最悪である。
ある日、メアリーは、ニューヨークの電話帳から適当に選んだ名前に手紙を出す。
相手の名前は、マックス・ホロウィッツ。
手紙は海を越えて、マックスの元に届く。
かれもまた孤独な人間だった。
マックスは、44歳で独身、190cm/160kg、ニューヨークのちいさな部屋にひとりで住んでいる。
アスペルガー症候群を患っており、人とのコミュニケーションが苦手だ。
相手の表情が読めず、表情と意味との対照表を作ったりしている。
過食症でもあり、かなり肥満している。
にもかかわらずチョコドッグ(ホットドッグのウィンナーの代わりに板チョコが挟んである。マックスのオリジナル)が大好きだ。
突発的な、予期せぬことが起きるとパニックになり、部屋の隅で震えて過ごす。
そしてチョコドッグを大量に食べる。
メアリーからの手紙が突然届いたときも、部屋の隅で震えた。
18時間窓の外を見続けたあと、かれはメアリーに返事を出そうと決心する…。
こうして、孤独な者どうしの文通が始まる。
ふたりにとって、お互いは、アニメのキャラや空想の友人やペット以外で、初めてできた人間の友達であった。
ここから温かな友情物語がはじまるのかな、と思って観てると、話はとんでもなく重く暗い方向へとすすんでいく。
メアリーの行動により、ふたりの友情にひびが入る。
メアリーは、どん底の気分を味わい、自殺すら考えるようになる。
なぜそうなったかは書かないが、観ていると、「まぁ、そうなりますよねぇ」と思ってしまう。
しかし、いくら重く暗い話ではあっても、粘土の人形がうにゃうにゃ動いているので、どこか可愛くいじらしく、生の人間が演じるよりも、重さや暗さを受け入れやすいと言うか、それほど沈鬱にならずに観ていられる。
ラストは、感動的だ。
まさか、粘土の人形に泣かされるとは、思ってもみなかった。
わたしは、最初吹き替えで観て、2回目を字幕で観た(Amazon Prime Video には字幕版しかないが)。
ナレーションの声は吹き替えの方が好き。
字幕版のマックスの声を、フィリップ・シーモア・ホフマンがやっていて、これはこれで、なんだか切ない。
傷つきやすい魂が傷つき、しかし、やがて救いが訪れ、傷ついた魂が癒される。
そういうお話。
どこにでも転がっているようなお話ではないが、いまでも、世界のどこかで起こっているお話のような気もする。
ちかくに板チョコ、あるいは甘いクッキーなどを置いてから観始めるべし。
▶ Hayden の『Everything I Long For』(1995) を聴く。
Hayden (ヘイデン)は、カナダのミュージシャン。
これはデビュー・アルバム。
冒頭の曲。
代表曲でもある。
心つかまれる。
▶このところ身体がだるい。
まるで水の中を歩いている感じで、身体が重い。
動くのが億劫。
なにをしてもすぐに疲れて動けなくなる。
春先と秋口には、10日ほどこういう状態が続く。
むかしからのことで、わたしはかってに、“Spring Disorder” “Autumn Disorder” と呼んでいる。
原因は謎。
そのうち治る。
妻も、「今年も来たね」とか言って、たいして心配はしていない。
わたしも心配はしてないのだが、いささか辛いのだ。