▶元旦である。
いつも通り午前4時起床。
今年一杯目の珈琲を淹れ、年明けにはかならず読むことにしているエリ・ヴィーゼルの『夜』を静かに読む。
ホロコースト文学の傑作である。
きわめて愚かしく残酷なことが、きわめて美しく崇高な文章で綴られている。
人間の悪と美を同時に体験させられているかんじになり、読んでいると頭が(と言うか魂が)ぐらぐらとしてくる。
▶妻とお雑煮を食べる。
わが家のお雑煮は、何年か前からずっと陳健一レシピのピリ辛雑煮である。
去年は、妻が「あなたの故郷のお雑煮がたべてみたい」と言うので、白味噌仕立てに餡餅を入れるというトリッキーな雑煮を作ったのだが、食べ慣れているはずのわたしにさえ微妙な味だった。
故郷は遠くなりにけり。
▶谷中七福神巡りに出る。
田端の東覚寺(福禄寿)から、日暮里の青雲寺(恵比寿)、日暮里の修性院(布袋尊)、谷中の長安寺(寿老人)、谷中の天王寺(毘沙門天)、上野の護國院(大黒天)、上野の不忍池(弁財天)と回るコースである。
お参りをしながら、だらだらと歩いて3時間ほど。
歩いている途中、谷中の裏路地でちょっと変わった家を見つける。
道に沿ってカーブしており、まるで電車のような家。
誰も住んでいないようだった。
(わたしは下戸なので、一杯やるのは妻なのだが)
写真に撮るほどの料理ではないなw
わたしたちが座った席のとなりのテーブルで、初老の男3人が楽しそうに飲んでいた。
大人になって、ああ言う風に楽しそうに語り合える友人がいると言うのは、すばらしく幸せなことだなと、そういう友人のいないわたしは少し羨ましく思った。
上野松坂屋でカステラの切れ端など買って、バスで帰宅。
「めずらしく、正月らしい1日をすごしたわね」と妻が笑う。
▶帰宅後、爆睡。
と言っても2時間ほど。
しかし、何日かぶりにぐっすり眠れた。
さっそく七福神のご利益か?
▶妻が暮れに作った筑前煮で軽く夕食。
食後、映画を1本。
公開当時にいちど観ているが、ストーリーの細かい部分はほぼ忘れている。
ハリーもハーマイオニーも可愛いが、こんかい観て良いなあと思ったのはロンである。
幼くしてすでに伝説を身にまとっているハリーや、美人で優等生のハーマイオニーとは違って、ロンはいつもどこか自信なさげである。
その困り顔がたまらなく愛おしい。
シリーズを最後まで観たひとは、やがてロンには、とんでもない幸運が訪れることを知っているので、ロンがいくら困り顔をしても、「いやいやロンくん、きみにはちかい将来すごい幸運が訪れるんだぞ」と思い、ついニヤニヤしてしまう。
▶寝る前の1枚。
二十歳の頃、背伸びをして渋谷のジャズ喫茶(店名は忘れた)に入った。
紫煙にけぶる店内に流れていたのが、このアルバムである。
マイルス・デイヴィス(TP)、キャノンボール・アダレイ(AS)、ハンク・ジョーンズ(P)、サム・ジョーンズ(B)という豪華メンバー。
店の壁にリクエストを書く黒板があって、そこに「Now Playing Cannonball Adderley」とあったので、マイルス・デイヴィスのトランペットをキャノンボール・アダレーの演奏だと思い込み、ふむふむと頷いていたわたし…w
可愛い思い出である。
思い出を噛みしめていたら、眠れなくなってしまった…。