単純な生活

映画・音楽・読書について、だらだらと書いている

ありふれた日常 #34 / 今年のベストアルバムは、もうこれで良いのだ

 

▶午前4時起床。

“起床”と言うか、午前3時頃に目覚めてしまって、その後寝床でグズグズ過ごし、結局しかたなく起き出したかんじ(いつものことだが)。

苦い珈琲を飲みながら、(ぼんやりとした頭のまま)ヒッチコックの『裏窓』を観る。

 

1955年制作。

ヒッチコックの代表作のひとつ。

始めて観たのは中学の頃で、おそらく淀川長治解説の“洋画劇場”で観たと思う。

面白かったという記憶がない。

およそ50年ぶりに観たわけだが、サスペンスとしては、やはり面白くない。

 

足を骨折して身動きがとれないカメラマンのジェフ(ジェームズ・スチュワート)が、向かいのアパートの住人の生活を覗き見ている。

で、彼は、そのうちの一室で殺人が行われたのではないか?と疑いをもち、友人の刑事や恋人リザ(グレース・ケリー)を巻き込んで、ドラマが展開していく…。

 

が、どうもこの映画のキモは、向かいのアパートで行われたかも知れない殺人ではなく、それを覗いている主人公と恋人の恋の行方のようなのだ。

ジェフは、リザから結婚を迫られているのだが、ジェフの気持ちは煮え切らない。

ファッション関係の仕事で生計をたてているリザと、カメラマンとして世界を飛び回っている自分とは住む世界が違い過ぎるとジェフは感じているのである。

(とうじ付き合っていたイングリッド・バーグマンに対して「僕は戦場で死ぬ男だ。君とは結婚できないよ」と別れを告げたロバート・キャパを思い出す)

ジェフは、なんだかリザとの結婚問題を先延ばししたいがために殺人事件の推理に没頭していくようにも思える。

純粋にサスペンス映画ではないんだよなぁ…。

 

 

▶気になったので、原作であるウィリアム・アイリッシュの『裏窓』を読んでみる。

 

予想したとおり、こちらはサスペンス以外なにもない。

主人公の職業もわからず、なぜ足を骨折したのかもわからない。

恋人も出てこない(通いのハウスキーパーと友人の刑事は登場する)。

映画では、全編にわたって映されていたアパートの住人の日々の生活など、ほとんど語られることはない。

語られるのは、窓からアパートの住人を覗く主人公と、殺人犯との戦いのみ。

じつにスッキリとしたサスペンスである。

ここにヒッチコックは、ジェフとリザの、結婚にまつわる葛藤を付け足したわけである。

ヒッチコックがほんとうに語りたかったのは、おそらく付け足したエピソードの方だろう。

 

 

▶朝食を食べたあと、至福の二度寝

二度寝は気持ち良いのだが、さいきんは二度寝ですらうつらうつら状態になりつつある。

年をとると、気持良いことがひとつずつ消えていく。

 

 

▶起きて、熱い黒玄米茶を飲みながら、Meshell Ndegeocello の『The Omnichord Real Book』(2023)を聴く。


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すっごく控えめに言って、傑作である。

聴いていると、魂が、どこか遠くの楽園にまで飛んで行ってしまう。

音楽を好きで良かったと思う。

今年のベストは、もうこれで良い。

 

 

▶昼食の後、妻と外へ。

ちかくのサンマルクカフェに入り、夕方まで読書など。

と言っても、むかしのようにひたすら読書するほどの集中力はなくなっているので、途中スマホで「刑事コロンボ」を観たり、「必殺仕掛け人」を見たり、ぼんやりとアイスコーヒーをすすったり、いちゃついているカップルを睨みつけたり、なにやら難しい勉強をしている妻をからかったりして、夕方までの時間をつぶす。

 

涼しくなった頃にカフェを出て、谷中銀座で買い物をして帰る。

 

 

▶夕食に豆腐ハンバーグを食べ、食後に珈琲を飲み、しばらくぼんやりした後、たいして眠くはないが床に就く。

早く寝ようが、遅く寝ようが、どうせ眠れないのである。

寝床の中で、だらだらとYoutubeのショート動画などを見る。

ふと、「お前の人生、これで良いのかい?」と言う声が、どこからともなく聞こえてくるが、いまさらどうすることもできないので、「これで良いのだ!」。